電話をしている時間の長さと労働時間の長さは無関係ではありません。
「無駄な電話が多い≒労働時間が長い」
もちろん、無駄な電話が少なくても長時間労働というケースはあります。
でも無駄な電話が多くて労働時間が短い、というケースは少ないです。
無駄な電話が多いということは効率が悪い、段取りが悪い、ということを意味します。
「無駄な電話が多い≒労働時間が長い」という関係がある以上
・長い労働時間を何とか改善したい
・電話にはコミュニケーションとしての良さもあるから、無駄な電話もしょうがない
という2つの考えは矛盾しています。
通信手段には一長一短ありますので、電話を使うべきではないという話ではありません。
無駄な電話は減らしましょう、という話です。
よくよく考えると本当に必要な電話というのは、思っているよりずっと少ないです。
目次
電話をしている=仕事をしている、というイメージ
「電話をしている」というだけで、仕事をしていると錯覚する人は少なくありません。
その象徴が電話をしている写真です。
昔より減りましたが、ホームページや求人サイトなどに「電話をしている人の写真」を使っている会社は多いです。
「電話をしている=かっこいいビジネスマン」
これが日本人の一定数が持つイメージです。
通信手段が増えた今でも、このイメージが日本の総労働時間を押し上げているのは間違いありません。
欧米は契約社会であり、口頭を嫌い明文化を好むため、日本より電話が少ないです。
当たり前の話ですが、電話は通信手段であって、電話をかける行為自体に意味はありません。
電話の質が重要です。
無駄な電話の時間×2、が日本から消えた労働時間
無駄な電話は相手の時間も奪います。
・結局何の話だったんだろう?
・その内容はメールで連絡してほしい
こんな経験は誰もが経験したことがあると思います。
無駄な電話は、自分の労働時間を長くするだけでなく、相手の労働時間も奪います。
時間は減るだけ、貴重な時間を奪ってはいけない
「Time is money」と言いますが、時間は増やせません。お金は増やせますが。
そんな貴重な時間を浪費する・奪う、というのは賢明ではありません。
この本↑に書いてあった話ですが、
【前提】
・今、30歳の人が80歳まで50年生きると仮定
・毎日24時間あるが、睡眠・食事・入浴など、どうにも工夫しようもない時間が10時間ある。
・つまり1日の可処分時間は14時間(24時間-10時間)。
【30歳の人の可処分時間】
14時間×365日×50年=約25万時間
今40歳の人なら、あと40年で約20万時間
この時点で長く感じるかどうかは人それぞれですが、単位を時間から円に変えると重みが変わります。
あと、25万円
あと、20万円
お金は増やせますが、時間は減っていくだけです。
1時間ごとに誰もが等しく1円ずつ減っていきます。
何もしなくても、1年で約5,000円減ります。
無駄な電話は、この貴重な時間を奪います。
集中力が奪われて、2段階で時間が奪われる
電話が多くてデスクワークが全然進まない。もうこんなに時間が過ぎてしまった。
でも、実際の通話時間を考えると、過ぎた時間と一致しない。
そんな経験はないでしょうか?
これは電話している時間と合わせて集中力を奪われているからです。
電話を受けると、それまでにしていた仕事を中断します。そして電話の後に再開します。
デスクワークのような仕事は自転車と同じで、加速性があります。
そのため、一回止まるとせっかくの加速がゼロになり、最初からこぎなおしです。
電話が増えると、情報が個人に帰属する
電話でやりとりする癖がつくと、情報を共有しなくなる。
リスクヘッジや強制力がない限り、電話のメモをデータで残して共有、なんてことはしなくなる。
そう考えると、職階があがるほど情報を共有しなくなる、という傾向になります。
本来なら職階が高い人の判断や情報ほど、組織力をあげるために共有すべきです。
また、情報が共有されなければ、その分だけ周囲の労働時間が長くなるのは言うまでもないですね。
いつでも電話で、と思うと油断する・段取らない・成長しない
社外向け
「分からないことがあったら、いつでも電話してください」
これはフォロー体制としては有効ですが、本当に「いつでも電話」が必要なケースは少なかったりします。むしろ、段取っていない、適当に伝えた、ことの代償であることも多いです。
社内向け
「分からないことがあったら、いつでも聞いて」
いつでも聞ける、という状態は自分で決断しなくなりますし、油断も生むので、成長スピードが格段に落ちます。段取りが悪くなるのも間違いないです。
そもそも業務がマニュアル、ルール、チェックリストなどで整備・文章化されていないことが問題かもしれません。情報共有がされていないために、簡単な仕事にもかかわらず、「いつでも聞いて」と言っている可能性もあります、これは電話に限りません。
「いつでも聞いて」という姿勢も大事ですが、業務の整理整頓もした方がいいですね。
無駄な電話の減らし方
無駄な電話を減らす方法は大きく分けて3つあります、
無駄な電話をかけない
無駄な電話をかける人には、無駄な電話がかかってきます。
メールなど他の通信手段で問題ないなら、他の通信手段を利用しましょう。
メールの場合、記録も残るし、論点も明確になります。
無駄な電話が来ないように段取る、整備する
上で書いたとおり、段取りが悪い、情報共有がされていない、形式知化されていないと余計なやりとりが発生しやすいです。業務の整理整頓をしましょう。
無駄な電話を受け付けないようにする
これは電話で質問などを受けてもメールで返すようにして、メールでのやり取りにシフトしていく方法です。メールで送ってくださいと直接伝える方法と、気づいてもらう方法があります。
相手がビジネスマンであれば、すぐに理解してくれるはずです。
まとめ
コミュニケーションという蓑に隠れて無駄なやり取りが多くなっている会社は多いです。
最後に全社的に電話を制限した会社を紹介します。
ユニークな制度が多いトリンプです。
1992年から2006年までの社長在任期間中、ずっと増収増益だった吉越社長の元で生まれた制度です。
電話というか、集中力を削ぐものすべてを制限したルールです。
『がんばるタイム』
しばしばマスコミに取り上げられるトリンプ随一のユニークな制度。毎日2時間(12時30分~14時30分)、コピー・電話・立ち歩き禁止。部下への指示や上司への確認も禁止。自分の仕事だけに集中するための貴重な時間です。「天使のブラ」もこの時間に生まれました。スケジュールどおりに動ける。自分の仕事に集中できると、社内でも好評です。
トリンプのHPより
実際に働いていた人に聞いたことがありますが、本当に仕事がはかどると言っていたのを覚えています。
無駄な電話もいけませんが、他にもできることはたくさんありますね。