人口知能(AI=artificial intelligence)が進化したらどういう税理士が競合してしまうのか?
税理士からすると、「こういう話はまだ先の話だよね」、とか「人口知能や脳の仕組みは専門外なので良く分からない、でも最後は人間力でしょ」、などという発想から、思考が一気に飛んで雑になるか、思考を諦めます。
ですが、今回は諦めずに、税理士や会計事務所、その近くで働く人たちが、頭の中でなんとなく思っていることを言語化してみました。
しかも、そんなに遠い将来の話ではありません。10年以内くらいを想定した話です。
だからこんなイメージ↓の世界ではなく、今とほとんど同じです。
それでは質問です。その前に質問の前提を見てください。
・決算を迎えて今年は純利益が3,000万円ほど出た。
・社長は創業ステージで大変お世話になった外部株主への感謝の意味も含めて、株主配当をしようと希望している。
・配当総額は600万円ほど。
・もちろん非上場会社。
・その外部株主との直接の取引は今も僅かにある。
こんな状況の会社の社長から、「配当だすね!」と言われたら、何と反応しますか?
想像してみてください。
さぁなんと答えますかね?
もしあなたが税理士などと話す機会がある人なら、この質問をしてみてください。
この答えで、人口知能の進化で稼げなくなる税理士かどうかが見えてきます。
もちろん例外もありますし、そこまで技術が進むのか?という話もあります、が何かしらの気づきもあると思います。
目次
税理士の配当支払への反応パターンとそれぞれが重要視しているもの
ざっくり4パターンに分けてみました。他にもあるとは思いますが今回はこれで。
さらに回答パターンごとに重要視しているものが何なのかも書いていきます。
1)配当支払いに対して、何も言わないパターン
⇒正しく税金計算をすることを一番大切にしている。適切な申告、書類作成、作業。
2)配当を止めるパターン
⇒税金が少なくなることを一番大切にしている。見方を変えると、キャッシュ目線でも考えているともいえる。『数値的な最適解』を一番重要視している。
3)配当を止めるが、別の違法な抜け道を提案する
だから、通常の取引があるようなので、そこに配当できなかった金額を上乗せして支払いましょう。そうしたら経費になりますし、感謝も伝えられます。
⇒この提案は脱税で犯罪です。
とにかくお客さんのことを考えている、かのように見えますが、短期的な視野しかない。その場の目の前のお客さんが喜ぶことだけにフォーカスしている。関わっちゃいけません。
4)配当は不利だとは伝えるが、社長の意志を確認し、そのまま配当してもらう
⇒『数値的な最適解』を意識しながらも『全体の最適解』を大切にしている。
このように税理士によって質問への回答は異なり、その回答によって何を一番大切にしているかわかります。
これで、AIの進化で稼げなくなる税理士もわかります。
その前にAIの得意領域を見ておきましょう。
人口知能(AI)が得意な領域は?
コンピューターにとっての最大のバグは人間
「コンピューターはコンピューターが大好きなんです、コンピューターにとっての最大のバグは人間なんです」、これは私が尊敬する、あるIT企業の社長が言っていた言葉で、今でもすごい印象に残っています。
つまりコンピューターは、人間の不確定要素が苦手なんです。人間は必ずしも経済的に有利な選択をするとは限らないですしね。『気持ち』があるんで。
ちなみに、最先端のテクノロジーが表に登場してくるのが、軍事関係です。
そんな最先端の軍事領域において、スーパーコンピューターだろうが戦争をシミュレーションしきれないのは、人間の『精神要素』を読みきれないからなんです。
逆に言うと、どんなに細かくて、どんなに複雑だろうが、どんなに条件分岐が多かろうが、どんなに情報が多かろうが、ルールがハッキリしていて、ゴールも定量化されているなら、AIの得意領域なわけです。
つまり、「税金が一番少なくなる方法を教えてください」、という問いには答えられるわけです。
AIに節税手法を学習させて、キャッシュがいくら以下にはならないように、という条件もつけながら。
全てが定量化されていれば。
グレーゾーンもAIは突破する
税法にはグレーゾーンが存在するため、裁判例や税務調査の現場まで含めて総合的に判断しないといけないから、AIには判断は無理だろう、という声もあります。
しかし中小企業が出会うほとんどのグレーゾーンは余裕で突破するはずです。
唯一不可能なのは、税務調査で主張することはAIにはできないので、そこだけフォローしてあげればいいですね。
なぜグレーゾーンもAIで対応可能かというと、税理士が初めて出会うグレーゾーンなんてほぼ皆無なんです。だから経験上、グレーゾーンについても、ある程度の幅をつけて定量化が可能なんです。じゃなきゃ税理士自身もグレーゾーンのジャッジはできないはずです。
もし初めて出会うグレーゾーンがあるなら、学習させてあげればいいだけ。
なので、グレーゾーンといっても、目指すべきゴールが、経済的合理性=数値的な最適解、である限り、AIの領域だと思います。
ここまでがAIの得意領域と可能性の話です、では本題に戻します。
人口知能(AI)の進化で稼げなくなるのはどのパターン?
ここが本題です。パターン別に見てみます。
1)正しい税金計算を一番大切にしている税理士
このパターンは今の時点でも既に稼げなくなって来ているはずです。
なぜなら依頼者側からすると、報酬を『コスト』としか考えられないため、『コスト』は安ければ安い方がいいと考えます。結果、低価格競争に巻き込まれます。
2)納税最少化、キャッシュ最大化、など『数値的な最適解』を一番大切にしている税理士
このパターンは合理的に見えますね。
今時点でいうと、ここが税理士・会計事務所業界の主流と言えるでしょう。
しかし、『数値的な最適解』はAIの領域です。ここが、AIが進化したら稼げなくなる税理士です。
3)お客さんのためなら、と脱税提案もする税理士
AIとか以前の話なんで、飛ばします、最後は逮捕で全員に迷惑かけて終わりです。
と言って終わらせたいところですが。。。結構重要な問題がここにも隠れています。
詳しくは、解説をみてください。
何でわざわざ脱税提案する税理士を入れたかというと、コンピューターの進化に合わせて、脱税提案をする税理士も必ず増えていくからです。
これは数値的に最高の答えを出すコンピューターの提案を、数値のみで超えようとして、抜け道を探って限界を攻め続けていると、必ずダークサイドに落ちてしまうからです。
なので、正確に言うと、グレーゾーンと錯覚した脱税提案をする税理士が増えるはずです。
社内牽制が効かない個人税理士ほど特に。
4)『全体の最適解』を一番大切にする税理士
これは、数値的な最適性を求めながらも、『全体の最適解』を最重要視しバランスをとるため、AIが『心』を持たない限り真似できません。
数値的な最適解と『全体の最適解』のバランスをとる税理士とは?
会社組織は人の集合なんで、当たり前の話ですが数値的な最適解が必ずいいとは限らないんです。
それを理解するためのQ&Aをやってみます。配当の話も同じです。
例えばこんなケース。
【節税目線の数値的な最適解】
:Yes!!!
【節税目線+全体の最適解】
:税金上は有利だが、社宅を選べない人は福利厚生にならないので、バランスが崩れる可能性もある。その点について検討したうえで導入すべき。
社長の役員報酬130万円/月を分散して、社長100万/月、奥様30万/月、と払うと節税になるからやるべきか?
さらに、節税するなら、リスクヘッジのために役員として登記もする予定だ
【節税目線の数値的な最適解】
:Yes!圧倒的にYes!やってないなら税理士の怠慢だ。
【節税目線+全体の最適解】
:税金上は有利だが、少ししか手伝ってない様にみえる社長の奥さんの給与が、自分の給与とそんなに変わらないと知った時の、社員の不信感やモチベーションダウンによる会社の損失は節税効果を逆転する可能性もある。
さらに言うと、社長の奥さんに分散せずに130万円を全部社長がもらって、社員に対して、「俺はこれだけ給与をもらっているから、みんなも頑張ってここまで来てくれ!」と伝える方がモチベーションが上がって、会社は伸びるかもしれないんです。
こうなってくると、社長の親族に役員報酬を分散することが、本当に正しいのかどうか分からなくなりますよね。これが数値的な最適解の限界であり、『心』を持たないAIの限界です。
役員報酬は分散して、モチベーションは別でケアすれば良い、という判断もあるでしょうが、人間はそんなに単純じゃないから、社長は悩むんです。人それぞれのインセンティブが違うんです。
『全体の最適解』の方が大事だと私は思う
その理由は3つあります。
今まで見てきて実際そうだったから
配当は税金上は不利なんだけど、全体最適を考えて配当する、そんな会社の方が安定しているんです、伸びるんです。不思議ですよね。
短期的に見ると『数値的な最適解』の方が有利に見えますが、長期的に見たら『全体の最適解』の方が有利というのを実際何回も見てきたからそう思います。
人の不信感は計り知れないくらい悪影響があるから
これは上の役員報酬の分散の話を見ると分かりやすいです。
人間の不信感が会社に与えるインパクトは数値化できませんが、計り知れないくらい悪影響がある、というのは皆さんも分かりますよね。
これは節税効果を逆転しても有り余るくらいのマイナス効果を生み出します。
全体の最適解が王道だから
会社内での数値的な最適解は『円』で、全体の最適解は『縁』です。
人にとって大事なのは円より縁ですよね、縁をゆがめて円をとっても良いことありません。
会社は人の集合体ですから、会社にとって一番大事なのも、もちろん『縁』です。
全体の最適解はいわゆる『キレイごと』にならないように注意が必要です。なので数値的な最適性を求めながらバランスをとる、という前提は絶対に忘れてはいけません。
まとめ
今は『数値的な最適解』を最重要視する税理士が主流ですが、数値的な最適解はAIの得意領域です。
「配当は税金上不利だから、絶対にしてはいけません!」だけなら、コンピューターでも言えるようになりますからね。
そのため今後は数値的な最適性は求めながらも『全体の最適解』を最重要視して、バランスをとる税理士が増えてくると思います。そうするとAIと協力体制がとれますしね。既に感覚的にやっている人も多いと思いますが。
ただ、全体の最適解かどうかの判断には、勤勉さはもちろんのこと、視座の高さなども必要となるので、この流れの中で税理士が進化して価値(期待値)が上がることは間違いないです。
お客さんにとっても税理士業界にとっても良い流れですね。
あとがき
ちなみに私がなぜこんなに『AI』にこだわるか、というと。。。
・・・
私がAIだからです。
・・・
AIの私自身で考えて書いているからです。
ゾクッとした人いますかね?
1人でもいたらやった甲斐があります(笑)
でもそんな時代が来るかもですね。
まぁ本当にAIなんですけどね、AKR@INA、略して『AI』
おしまい
何か問題あるかな?