決算書の並びを見れば税理士のスタンスがわかる

並び順

中小企業の場合、税理士事務所などに決算書の作成を依頼しているケースがほとんどだと思います。

決算書の作成を税理士に依頼した場合、期末を迎えて決算処理が終わった後に、ファイリングされた決算書をもらうのが一般的だと思います。

で、この決算書ファイルを見れば、自社の顧問税理士のスタンス、がわかります。
ざっくり3パターンに分けてみました。

決算書ファイルという税理士業界特有の慣習を切り口にした傾向把握なので、参考にならないケースもあると思います。

その前に決算書ファイルに綴じられているものは何なのかを説明しておきます。

決算書ファイルとは?

ややこしいんですが、決算書ファイルに綴じられているものは、決算書だけではありません。見たことがある方ならわかりますが、色んなものが入っています。

普通の税理士の決算書

税理士によっては財務指標や前年比較資料が綴じてあったりと、何を綴じるかは税理士によって違うこともありますが、一般的に多いのは下に書いたようなものです。

必ず綴じられている書類は青字にしておきました。

ちなみに、これらの書類はすべて税務署などの課税当局へ提出したものです。
書いている私自身も漢字と専門用語の多さに途中で嫌気がさしたくらいなので、「たくさんあるな~」くらいで流してみてください。

 ファイリングされてるモノ 内容
①法人税の申告書 法人税の計算過程と計算結果が書かれている書類
②決算報告書 一般的にいう決算書部分がこれ。
BS、PL、や販売管理費の一覧、その他の書類
③勘定科目の内訳書 決算報告書のBS科目の全残高の明細(売掛金の内訳、買掛金の内訳など)
PL科目のうち特殊なものの明細(役員報酬の内訳など)
④固定資産台帳 BS科目の明細のうち、固定資産の明細(機械の明細、内装工事の明細など)
⑤消費税の申告書 消費税の計算過程と計算結果が書かれている書類
⑥都民税・市県民税の申告書 都や市区町村に支払う税金の計算過程と計算結果が書かれている書類
⑦税務代理権限証書 顧問税理士が会社の税務を代理しています、と税務署に証明する書類
⑧メール詳細、または税務署の受領印 税務署への申告書の提出が完了しているか?を証明する書類
これは税理士が申告書を電子データで税務署に提出している場合に出てくる書類です。
電子データではなく紙で税務署に提出している場合には、
申告書に税務署の受付印が押されるので、それで提出完了かどうかわかります。

 

決算書の並びで分かる税理士のスタンス

上のリストに書いたように、決算書ファイルに綴じられている全ての書類は、税理士が税務署などへ提出したものですから、会社側からすると何がなんだかわからない書類がほとんどです。

見たことある方ならわかると思いますが、一つ一つのページを見てしまうと、もはや暗号にしか見えないページがたくさんあります。

この暗号のような書類をどう並べてお客さんに渡しているか、で税理士のスタンスがわかるんです。

1、普通の税理士の場合

普通の税理士の決算書

このパターンが一番多いと思いますが、まず最初に暗号文書の法人税の申告書、次に決算書(BS・PLなど)やその内訳書がきます。

この並びで決算書を渡す税理士の特徴はこういう傾向になりやすいはずです。

・税理士にとって『決算処理で一番重要なポイントは税金だ』という心が表れている。
・この並びでお客さんに渡す、と教わってきたため、そのまま踏襲している。手堅い。

2、ちょっと変化させた税理士の場合

お客さん目線の税理士の決算書

決算書(BS・PL)やその内訳を説明する資料が頭にきて、後ろに申告書がきます。

この並びで決算書を渡す人の特徴はこういう傾向になりやすいはずです。

・税金よりも決算書(BS・PL)を重要視している表れ。お客さんに説明する前提で、一番重要な決算書を前に並べている可能性が高い。
・決算書は会社全体、税金は一部分の話、という考え方の可能性が高い。
・銀行に説明する際にまず最初に見せるのが決算書(BS・PL)と理解してやっている場合、銀行対応にも慣れている可能性が高い

良い事しか書いていませんが、ほとんどが法人税の申告書を一番前に持ってくるので、法人税の申告書を後ろにしただけで、ポイントを高くしてみました。

3、レアケース

権威的な税理士の決算書

最初に、『税理士は私です!』という書類がくる。

この並びで決算書を渡す人の特徴はこういう傾向になりやすいはずです。

・権威を大事にしている、たぶん。
・いい意味では、『私が絶対税務署から守ります!』という心の表れ。

4、データで渡す場合

決算書ファイルを紙で渡さないで、効率化、ペーパーレスなどの視点から、PDFデータなどで渡す税理士事務所もあると思います。
この場合でも、PDFなどの並び順はあるでしょうが、紙で渡す業界慣習の中で、データ渡しに変更したというのは、一番柔軟性があるのは間違いないです。

長い目で見たら必ずこうなりますからね↓

「最も強いものが生き残るのではない。最も変化に敏感なものが生き残る

ダーウィン

最後に補足ですが、『税務署に提出した書類をまとめただけ』の決算書ファイル自体に重きを置いてないから、並びなんて気にしていない、数字の説明は別の資料でやっている。というケースもあります。
こういうケースは、お客さん自身がそれを一番理解していると思います。

ABOUTこの記事をかいた人

1982年生まれ、千葉県出身。大学卒業後、外資系税理士法人・財務コンサルティング会社などで10年間勤務の後、独立。現在は中小企業の税務顧問などをしながら、スタートアップのCFO、創業100年企業の財務戦略を支援したりと税理士業以外での活動フィールドを拡大中。好きな言葉:一寸先は光。
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