「税務調査はこわい」、こんな話が一人歩きしていますが、たまに脱税で逮捕されるニュースを流す国税庁の見せしめ効果がきいてるんでしょうね。
さすがに、『マルサの女』の効果はもうそんなに期待できないはずなので。。
マイナンバー制度の導入が落ち着いたら、マイナンバー制度が機能していることを知らせる意味で、誰かが逮捕されるんだろうな~。
とか言うから、国税こわいって話になっちゃうんですね、すいません。
税務調査での追徴税額の平均は?
昨年11月に発表された東京国税局の資料『平成25事務年度 法人税等の調査事績の概要』によると東京国税局が行った法人税の税務調査の概要は
・税務調査1件あたりの追徴税額の平均は約250万円
・税務調査で何も追徴がない確率30%(追徴あり1.8万件/調査件数2.6万件)
・東京国税局での追徴税額の合計は649億円
だそうです。ちなみに東京国税局の管轄は、東京・神奈川・千葉・山梨です。
たしかに、これを見ると「税務調査はこわい」となりますね。
ただ、海外取引のない普通の中小企業で、本当に法人税だけで250万円も持っていかれたなら、思い当たるところがある会社と言ってほぼ間違いないでしょう。つまり脱税です。それか税理士が相当気合い入っているか(笑)
「え、でも平均250万円でしょ、どういうこと??」と、言われる前にネタばらし。
中小企業の追徴税額の平均は250万円もない
『税務調査1件あたりの追徴税額の平均は約250万円』、この数字には、最大手企業も入っています。というのと1件あたり『平均』というのがポイントです。
この税務調査1件あたり追徴税額の平均の出し方は、追徴税額649億/調査件数2.6万件=250万円、です。
先月最高裁での敗訴が確定したヤフーも東京国税局の管轄で、追徴税額は約178億円でした。
たった1社で178億円ですよ。この178億円は今回の発表資料には入っていないかもしれませんが、それでも追徴総額649億円のうちの中小企業分はいくらなんだ、となりますね。たぶん相当少ないです。
下の表は、国税庁の統計情報を加工してみたものですが、これを見ると次のことがわかります。
・上位0.1%の法人数で日本の普通法人の所得総額の約半分を生み出している。
・上位8%の法人数で約9割の所得を生み出している。
(補足)
・ここでの会社数には赤字の会社(正確には所得がゼロ以下の会社)は含まれていません。そのため会社数の合計は約80万社となっています。
・所得金額とは、税引前の利益と考えてください(正確には違いますが)
法人税は所得金額に対して課税されるので、追徴税額の大小は間違いなく所得金額の大小に影響されます。そのうえ、上位8%の法人数で約9割の所得を生み出しているので
追徴税額の総額649億/調査件数2.6万件=税務調査1件あたりの追徴税額250万円
という計算がいかに無意味か分かりますね。
ヤフーは1件で約178億円です。
さらに、もう1つポイントがあって、東京国税局の資料をよく見ると
海外取引等に係る調査で911億円の申告漏れを把握
とあります。
法人全体の申告漏れ総額が3,127億円なので、約3分の1が海外絡みの取引に対する追徴だとわかります。となると、ざっくりですが649億円のうち、通常の国内取引分は430億円くらいまで下がります。
こうなってくると、実際はどれ位が平均の追徴税額なのか全く分からなくなりますね。
実際、中小企業はどれくらいの追徴税額を払うのか?
海外取引のない資本金1000万以下の中小企業でしたら、法人税の税務調査で何百万も持っていかれることなんてまずないです。
脱税してない限り。
本当に思い当たるところがなくて、何百万も持っていかれた会社があったら逆に連絡ください。
実際のところは、海外取引のない中小企業でしたら、法人税の追徴税額はこんな感じかと思います。税率30%を想定してます。
・0円・・・50%前後
・30万円未満・・・30%前後
・30万円~60万円・・・10%前後
・60万円超・・・10%未満
感覚値で書いてますが、大企業を含む単純計算での1件平均の追徴税額250万円に対して、所得金額や会社数のバランスを織り込んで細かく計算しても、そんなに遠くない数字になると思います。(国税庁から正確な計算に必要な数字がすべて発表されたら、ちゃんと計算してみたいと思います。)
※脱税の場合がどれくらいになるかは全く分からないので、この%には入っていません。
結局のところ、後ろめたいことは何もしてなくて、税理士ともコミュニケーションがきちんと取れているので思わぬ落とし穴もない、ということであれば、何も恐れる必要はありません。