「付加価値」の重要性を税理士が語る、想いと時間だけでは経営できない

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貨幣経済では、投下した「想いや時間」と「儲けの数字」はリンクしません。
これを感覚ではなく、正確に理解しなければ起業しても会社経営はうまくいきません。

これを理解していないと、『良いアイデアなのにうまくいかない』、『良いアイデアを投資家に提案したのに資金がでない』という発想になります。

正確に理解するためには、次の2つの違いを理解しなければいけません。

・考え方としての付加価値
・経営分析
での付加価値

ビジネスマンなら誰もが耳にしたことがある、「付加価値」を理解すると
「想いや時間」と「儲けの数字」はリンクしない、という意味がハッキリわかります。

「付加価値」などというと、中小企業には関係ない、と耳を閉ざしてしまう人も多いですが、
そんな人でも今回は「耳をかすべき」です。

貨幣経済ならこの話からは逃げられないです、それならコントロールしましょう。
経済構造を理解したうえで、想いを実現するために。

考え方としての付加価値とは?

付加価値とは、ある「もの」が有している価値と、それを生み出す元となった「もの」の価値との差のことである。このように「価値が付加される」という意味合いで、「付加価値」と呼ばれる。
Wikipediaより

これは、誰もがイメージしている「付加価値」ですね。
今回は、考え方としての「付加価値」を『本当の付加価値』といいます。

本当の付加価値は、『世の中を変えたいという強い想いや、それに費やした時間』とリンクするイメージですね。ただし、考え方なので、価値の計算はできません。

経営分析での付加価値とは?

経営分析の本などを見て嫌になった人は多いと思うので、ざっくりと概念から説明します。

経営分析の付加価値の概念

経営分析での付加価値とは、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)で世の中へ生み出したお金の価値、です。

これが概念です、自社が、どれだけ価値を生み出したか、世の中にどれだけ価値を提供したか、をお金の単位で表現したものです。

今回は、経営分析での「付加価値」を『お金の付加価値』といいます。

当たり前の話ですが、経営分析はすべてお金での指標です。

補足
嫌な話ですが、税理士などが言う「数字は重要です!」の数字とはお金のことです。
税理士が扱う数字は主に円単位ですから。%などに形を変えたりしますが、ベースはお金です。

つまり、「数字は重要です!」とは「お金は重要です!」という意味で、
「想いや時間と、儲けの数字はリンクしない」とは、「想いや時間と、儲けたお金はリンクしない」、という意味です。

次に計算式を書いておきます。先の話が重要なので、嫌になりそうな人は飛ばしてください

経営分析の付加価値の計算式

上で説明した概念がわかれば飛ばしても大丈夫です。
お金をベースにしているので、付加価値の計算も可能です。

計算の仕方は大きく2通りあります。

【控除方式】
売上高から、自社以外で産み出された価値を差し引いて、自社の付加価値を間接的に算出するもの。これは中小企業庁などで用いられていたもの。

・製造業の場合
付加価値=売上高(生産高)-(材料費+買入部品費+外注工賃)

・建設業の場合
付加価値=売上高(完成工事高)-(材料+部品費+外注費)
※自社で雇用していない大工さん(1人親方)に工事を外注したら、そのコストは外注費に入ります。

・卸売業、小売業の場合
付加価値(粗利益)=売上高-売上原価

・運輸、通信、不動産、サービス業
付加価値=売上高-直接材料費

【加算方式】
自社で産み出された価値を直接的に加算して計算するもの。これは財務省『法人企業統計』などで用いられているもの。

・全産業共通
付加価値=営業利益+人件費+動産・不動産賃借料+租税公課+減価償却費
※人件費=役員報酬+従業員給与・賞与+福利厚生費

<中小機構HPを参考に作成>

つまり、
・1,000万円のモノを仕入れた
・1,000万円のモノを1,500万円で売った
・儲けは500万円(1,500-1,000)

この場合、500万円が自社が世の中に生み出した付加価値(お金の付加価値)です。

投下した「想いや時間」とお金の付加価値はリンクしない

『こんな商品を作って世の中を喜ばせたいという強い想いや、それに費やした時間』と『お金の付加価値』はリンクしません。

それをイメージするために、極端な例で説明します。

【取引の前提】
買い手・A:1,500万円を持っている人(消費者)
売り手・B:1,000万円の国宝級の工芸品を仕入れて、1,500万円で売る人
作り手・C:1,000万円の国宝級の工芸品を、2年かけて作る人間国宝(材料代200万円)

この場合において、「作り手・C」と「売り手・B」の『お金の付加価値』を時間込みで説明します。

「売り手・B」の付加価値:
1500万円ー1,000万円=500万円(一取引あたりの付加価値)
「作り手・C」の付加価値:
1,000万円ー原価(材料200万円)=800万円(2年間の付加価値)

 

それぞれが、500万円と800万円の付加価値を世の中に生み出しましたね。
2年間この取引しかない場合を、取引前後で比べてみるとこうなります↓

付加価値集計

総合計が2,700万円の世界が、4,000万円の世界に変化していますね。
この増加分1,300万円がお金の付加価値です。

ざっくり言うと、この積み重ねが貨幣経済での国の成長値です。
付加価値のみ
「人間国宝の作り手・C」が2年間で生み出したお金の付加価値は800万円ですが、
「売り手・B」のお金の付加価値は一取引で500万円です。

どうでしょう?

作った工芸品に対する想いや費やした時間とお金の付加価値はリンクしてないと思いませんか?
これが貨幣経済での付加価値です。
当たり前の話ですが、これが現実です。

1人親方の大工さんも分かりやすい例です。
数千万で売る家を数カ月かけて作る大工さん(大工さんへの外注費は数百万円)、とその家を消費者に数千万円で売るハウスメーカー。
家に対する想いの強さは比べきれませんが、かけた時間で比べるとわかりやすいですよね。

これが世の中の経済構造です。実際はもっと複雑ですが、この構造の組み合わせです。
うちの業界は関係ないな、ということはないです。

この構造を理解したうえで、自社が『お金の付加価値』をどのポジションでどう提供していくか、を考えたほうがいいです。
これはお金に対する考え方、どれくらいお金を必要とするか、というのも重要な判断基準になるでしょう。

まとめ

付加価値は2種類あります。

自社・自分が投じた「想いや時間」は『本当の付加価値』とはリンクしますが、
『お金の付加価値』とはリンクしません。

・良いアイデアが生まれても、うまくいかないのはこのせいです。
・良いアイデアを投資家に提案しても、資金が出ないとしたらこのせいです。
・想いだけで事業がうまくいかないのもこのせいです。

リンクさせるには、本当の付加価値と合わせて、お金の付加価値についても考えなければいけません。
だからこそ、強い想いを収益事業にして資金化するのは難しいんです。

ただし、本当の付加価値を無視して、お金の付加価値だけを意識すると、長く続かない事業になりますので気をつけましょう。

貨幣経済では数字(お金、資本)は重要です。
うまくコントロールしながら付き合いましょう。

ABOUTこの記事をかいた人


34歳、千葉県生まれ。大学卒業後、税理士法人・財務コンサルティング会社などで10年間勤務の後、独立。現在は中小企業の税務顧問などをしながら、創業100年企業の財務戦略を支援したりと税理士業以外での活動フィールドを拡大中。高城剛は天才だと思う。好きな言葉:一寸先は光。
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